
「僕の行く道」新堂冬樹著 双葉文庫
まずお断りですが
今日はだいぶ毒を吐きます。
この本の帯には「双葉文庫ベストフェア」珠玉の逸品取り揃えました!!
とありました。
この作家さん、いつもはダークなサスペンスを書いているらしいのですが
ときにはこんなハートウォーミングな作品も書いているとかで
アマゾンでは「感動して泣きました」なんていう評も多々あったくらいです。
が・・・私としては、読み始めてしばらく
「この人本当に小説家を生業にしてるの?」と思い始めました。
内容は小学4年生の男児が6年以上もあったことがない母親を
探して東京から小豆島までひとり旅をする・・・という
「母を訪ねて・・・」ものなんですが
ストーリー展開はまあまあで「この先どうなって結末にいくのか?」という
ただそれだけの興味で最後まで読みました。
だけどね、この作家さん
人物キャラクターの設定が物凄いステレオタイプなんですよ。
例えば、ちょっと前まで会社経営をしていた男性が
不渡り掴まされて倒産し、一文無しになった挙句奥さんに死なれ
一人暮らし・・・という「おじいさん」に主人公の大志はお世話になるのですが、そのおじいさん、岡山の人だから方言があるというのを差し引いても
「それは、雷様じゃのうて閻魔様じゃろうて」とか
「おかしな子じゃ」といい、呼びかけには「のう、坊や・・・」って
これは日本昔話かい!!と突っ込んでしまいたくなる。
その他、いろいろ文句はありますが
何と言ってもこれだけは言わないと!!
この子のお母さん
結婚してすぐに腎不全になり週に2回
1回5時間の人工透析を受けることになったわけです。
ところが3年もすると物忘れが激しくなってきて
その原因が若年性アルツハイマーだというのです。
なぜそのアルツハイマーになったかというと
医師が「透析液の中にアルミニウムが入っていて
それが患者の脳にたまるとアルツハイマーになるのです。
だけど、透析はしないと命がないので
それは仕方のないことです」と言い切ります。
読んでいた私は「は〜〜〜〜〜!!!???」でしたよ。
第一に透析液の中にアルミは入っていない。
昔アルツハイマーの原因が脳内のアミロイドであるかもしれない
という説はありましたが
それはまだ確実ではないし
よしんばアミロイドがたまるとしたって
手足の関節とかに袋状にたまったりするから
手術して除去すればいいのです。
透析患者でリンが多くて困る人は
昔はアルミが入った薬を飲んでいたことはあるそうです。
だけどそれでさえ透析を始めて3〜4年でそんなことあるわけがない!!
小説としては記憶をなくした母親が
息子を認識する☆という感動の場面であって
それが多分この小説のクライマックスなのでしょうけど
もし、もしですよ、
これから透析に移行しなければならない患者さんや
そのご家族がいたとしたら
それでなくとも恐怖感をもつであろうのに
こんな嘘を書いた本を読みでもしたら
どれだけの恐怖にさいなまれることでしょう。
これは出版社に抗議しないといけない!と思いました。